縮む鳥

2019.12.10

地球温暖化によって鳥の身体に変化が起きていることが、

アメリカの最新研究で明らかになった。

体長が縮んだ一方、翼幅(翼を広げた端から端までの長さ)は伸びているという。

研究チームは、北アメリカの渡り鳥52種について、

過去40年以上にわたって集められた標本7万716体を調査した。

標本は、イリノイ州シカゴで建物に衝突して死んだ鳥を集めたもの。

この種類の調査としては最大規模のもので、

調査結果は、動物が気候変動にどのように対応しているのかを

理解するのに重要な役割を果たすという。

調査を主導したミシガン大学環境・持続可能性学部の

ブライアン・ウィークス助教授は、

「ほぼ全ての種類の鳥が小さくなっていた」と話した。

「対象となった種は多岐にわたるが、(気候変動への)対応は似ていた。

ショッキングなほど一貫していた」

ウィークス氏によると、動物の気候変動への対応は通常、

生息地域の変化や、移動および生殖の時期のずれなどに表れる。

しかし今回の調査で、体の変化が第3の重要な側面として示唆された。

「これは大きな意味を含んでいる。この3つの変化全てを考慮に入れなければ、

鳥がどのように適応しているのか理解するのは難しい」

鳥の体長は通常、脚の骨の長さで測定する。

調査によると1978年から2016年の間に、脚の骨は2.4%縮んだ。

一方、翼幅は1.3%伸びていた。

このことから、気温が高くなったことで体が縮み、

それによって翼が長くなったと考えられる。

「長距離の移動は非常に大きな負担を強いられる」

とウィークス助教授は説明する。

渡り鳥は、体が小さいほど使うエネルギー量が少なくて済む。

また、翼が長く、その代わりに体が小さな個体の方が、

長距離の移動に耐えられるという。

ただ、鳥の体が縮んだことと気温の上昇の関係は確実ではない。

小さな体の方が体積に対する表面積の比率が大きいため、

体温を下げやすいというのが一説だ。

ウィークス氏は、今回の研究に使われた標本は、

シカゴ・フィールド自然史博物館の鳥類学者、

デイヴ・ウィラード氏の「英雄的な努力」のたまものだと話す。

■鳥の死体を収集

研究の共著者でもあるウィラード氏は1978年、

春と秋の渡りの時期にシカゴの建物をめぐり、

衝突して死んだ鳥を集め始めた。

渡り鳥は通常、夜に移動するが、建物の人工的な光に引き寄せられ、

窓ガラスなどに衝突して命を落とすことがある。

毎年、数億羽の鳥が建物との衝突で命を落としていると推測されている。

ウィークス氏によると、ウィラード氏は

「今回の調査のことが頭にあったわけではなく、

将来何かの役に立つと思って」鳥の収集を始めたと説明した。

それ以降、多くのボランティアや科学者がウィラード氏の活動に貢献した。

今回の研究では、ウィラード氏がたった1人で7万716体の標本を調査。

同じ方法で全ての鳥を測定した。

ウィークス氏は、これがこの手のデータを取り扱う際の

「最善の方法」だと述べている。

温暖化による体長の変化は、他の動物でも報告されている。

2014年にはアルプス原産のヤギの体が、

気温上昇によって縮んでいることが報告された。

同じ年には別の研究で、気候変動によって

サンショウウオの体長が急速に縮んでいることが明らかになった。

(英語記事 Birds ‘shrinking’ as the climate warms)

 

~~~(c) BBC Newsより~~~

 

 
 

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