太古の火星には水があったと推測されているが、
金沢大と東京工業大などの研究チームは、
米航空宇宙局(NASA)の火星探査車「キュリオシティ」のデータから、
約35億年前の火星の水に含まれていた成分などを明らかにした。
地球の海水の3分の1程度の塩分のほか、ミネラルなども含まれ、
生命の存在も可能だという。
論文は25日付の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに掲載された。
金沢大の福士圭介准教授、東工大の関根康人教授らは、
過去に湖があったとされる火星赤道付近のゲールクレーターの底部で、
キュリオシティが採取した堆積物のデータに着目した。
放射性廃棄物の地層処分研究で用いられる
地下水の水質推定手法を応用して解析。
スメクタイトと呼ばれる粘土鉱物のすき間に、
周囲の水が含む成分の痕跡が残る性質を使い、
約35億年前のクレーター湖の水質を復元した。
その結果、水は中性で、塩分は地球海水の3分の1程度で、
「みそ汁やラーメンのスープくらい」(関根教授)。
マグネシウムなどのミネラルも多く含まれ、
生物がいた場合に利用できるエネルギーもあった。
研究チームは、同クレーターに微量の塩分を含んだ水が流入し、
蒸発する中で100万年以上かけて塩分が濃縮されたと推定。
福士准教授は「この手法で、生命に適した環境が火星の広範囲にあったのか、
いつどのように失われたのかを知ることができる」と話している。