2019.09.27

 

【世界から】欧州に戻るオオカミ。「汚名返上」を果たせるか

童話・赤ずきんちゃんに登場する悪役。

といえば、そうオオカミである。

満月の夜になると、鋭い牙や剛毛が生えて獣と化し人間を襲う

「おおかみ男」を始め、日本でも山中などを歩く人の後をつけてきて、

隙あらば害を加えようとするとされた「送りオオカミ」なる言葉があるように、

オオカミには古今や洋の東西を問わずネガティブなイメージがつきまとってきた。

 こうした伝承の影響からか、ヨーロッパ諸国では21世紀になっても

オオカミは恐怖の対象とみなされている。

家畜のみならず、人をも襲う害獣と信じ込み、忌み嫌う人も多い。

こういったことは伝説や逸話への登場頻度が高いことの裏返しでもある。

つまりは、オオカミがそれだけ人びとの生活に密着してきた証なのだろう。

そんなオオカミたちも、20世紀初頭を境に乱獲や生態環境の変化などが原因で激減した。

と思いきや、それでも彼らはひっそりと、どこかで生き続けていたのだ。

▼ヨーロッパ各地に出現

 2年前、オランダ北部の牧草地にオスのオオカミが1頭ひょっこりと現れた。

「彼」は人を恐れる気配を見せることなく、民家付近に姿を現したため、

話題をふりまく存在となった。

遭遇した人たちは当初、「大型犬が迷っている」くらいにしか思わなかったそうだ。

しかし、その堂々たる姿を撮影し改めて観察してみた結果、

「もしかしたら…オオカミでは?」との考えを持つようになったという。

そこで、自然保護団体と協力して詳しく調査を行ったところ、

犬ではなくオオカミであることが判明したのだ。

 国道沿いの道を横断したり、野原をゆっくり歩き回ったり―。

「彼」の意図は全く違うところにあるのだろうが、

その「自由な行動」が人びとの想像力をさらにかきたてた。

「一匹だけなのか? 仲間はいるのだろうか?」「どこかに定住しているのか?」

「何を食べて生きているのだろう?」などなど…。

 オオカミ出現のニュースは今や、ヨーロッパ各地に広がっている。

隣国ベルギー北部のフランダース地方にも一頭のオオカミが現れたが、

同国で野生のオオカミが目撃されるのは実に約100年ぶりのことだった。

ベルギーとオランダの両国に拠点を置く自然保護団体・ランドスハップは

野生オオカミ出現をメディアに報告する際に、

「ベルギー人にとって待ちに待ったニュースだ」と表現した。

オランダを始めとする近隣諸国では目撃や生息情報が次々と入ってくるものの、

ベルギーだけは「蚊帳の外」だったためである。 

 このオオカミは、首につけられた移動追跡センサーによって、

ドイツから移動してきた個体であることが判明したが、

ランドスハップはベルギー国内の自然環境はオオカミが

立ち寄ってみたくなるほどまでに整ってきている証拠だとして、

その「訪問」を歓迎した。

ベルギーで最大の部数を誇るオランダ語系日刊紙「スタンダード」は今年6月3日、

次のような記事を掲載した。

 ベルギー国内では今やオオカミたちのミーティング・ポイント、

つまり出会いの場になるほど多くの生体数が目撃されており、

隣国オランダでは中東部にある自然公園内でも、

オオカミが繁殖していることが判明している―

▼実は「益獣」

 オオカミの定住が歓迎されるその一方で、

「羊を狩られるのでは…」との懸念を抱く近隣農家もいるそうだ。

しかし、調査によればオオカミたちは主にイノシシや野ウサギ、

シカなどの野生動物を捕食して生きていることが判明している。

 家畜を襲うこともあるため、

古来より人間から徹底的に敵対視されてきたオオカミ。

しかし、彼らは、農作物を荒らす野ウサギやシカを捕食し、

自然界のバランスを保ってくれる重要な役目を果たす「益獣」である。

オランダやベルギーでは、強く美しさすら感じるこの動物の帰還を願う人たちが

年々、増えているという。

オオカミが「悪役」の汚名を返上する日も、

いつかきっとやって来るに違いない。

~~~(オランダ在住ジャーナリスト、稲葉かおる=共同通信特約)より~~~

 

20世紀初頭に絶滅したと言われるニホンオオカミ。

明治以前は、ニホンオオカミという呼び名ではなく、ヤマイヌと言われていた可能性もあり

ニホンオオカミ=ヤマイヌの可能性が高いそうです。

日本では縄文時代から、家畜としての「犬」の存在が確認できているようで

「ニホンオオカミ」とは別に、「犬」は居たようです。

狼も実は「益獣」であっただなんて・・・。

やっぱり「犬」の要素もあったんでしょうかねえ?

 

 

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