「おしっこは健康のバロメーター」ともいわれます。
中高年男性の中には「おしっこの勢い」で自分の衰えを感じた、
という人もいるのではないでしょうか。
では“健康な排尿時間”というものはあるのでしょうか。
泌尿器科が専門の順天堂大学教授、堀江重郎さんに聞きました。
◇体重3キロ以上の哺乳類 意外な共通点
動物種によって、排尿に要する時間は異なるのか--。
こんなことを検討した愉快な研究が、
2015年のイグノーベル賞(物理学賞)に選ばれました。
この研究によると、体重が3キロ以上ある哺乳類は、
どれも約21秒で排尿しているというのです。
つまり、ゾウもキリンもヤギもトラもチンパンジーも、
みんな排尿時間は、おおむね21秒なのです。
体の大きな動物の方が、排尿時間は長いような気もします。
でも、体が大きくなれば、当然ぼうこうの容量も大きくなるのですが、
おしっこを出す尿道も太くなり、勢いよくおしっこが排出されます。
そのため、体が小さくてぼうこうの容量も小さい動物と排尿時間は変わらないのです。
◇謎の臓器「ぼうこう」
なぜ、哺乳類は、一様に21秒という排尿時間になったのでしょうか?
生存に有利な形質を持った者が生き残っていくという
ダーウィンの進化論の自然淘汰(とうた)説で考えると、
「21秒」には何か理由があるはずです。
そもそも、爬虫(はちゅう)類や鳥類には
おしっこをためるぼうこうという臓器はありません。
一方で、哺乳類はぼうこうにおしっこをためて、まとめて排出しています。
ということは哺乳類にとっては、ぼうこうを持つことが生存に適していることになります。
ぼうこうを持つメリットは何でしょう?
おしっこの臭いから天敵に存在を知られて捕獲される危険を減らすとか、
縄張りを主張するマーキングにはまとまった量のおしっこが必要
などの理由が想像できます。
しかし、実はぼうこうの進化の理由はあまりよく分かっていません。
一方、なんらかの遺伝子群がぼうこうの形成に関わっていることは分かっています。
哺乳類がぼうこうを持つようになった理由は、
これらの遺伝子群が、いつ、どのように現れたのかが解明されて、初めて理解されるのでしょう。
◇21秒が「若返り」の鍵?
もちろん、ヒトも生殖年齢では、ほぼ21秒で排尿しています
(厳密にいえば女性は男性よりも排尿時間は短い)。
しかし高齢になると、男女ともぼうこうの筋力が低下することで、
男性はさらに前立腺の肥大によって、排尿を21秒で終えることが難しくなります。
見方をかえれば、排尿時間が21秒を超えるようになった人を高齢者と言ってよいかもしれません。
しかし、前立腺がんで前立腺を手術で摘出した男性は、
排尿時間が21秒以下に一気に減少します。
海外の研究では、前立腺を摘出した男性は、
一般の男性よりも長生きであることが知られています。
前立腺は、尿の切れに関わり、精子のクオリティーをあげる役割があります。
しかし、高齢者にとっては車の速度を制限するリミッターのようなもので、
排尿をしにくくする煩わしい存在になりがちです。
前立腺肥大症の手術のひとつに、レーザーで肥大した部分をくりぬいてしまう、
経尿道的ホルミニウムレーザー前立腺核出術という手術があります。
この手術を受けた方は「おしっこの出方が高校生の時に戻ったようだ」と喜ばれます。
加えて、男性の元気度のバロメーターである「男性ホルモン」
テストステロンの値が上がり、起床時の勃起が回復してくる方もいます。
気持ち良いおしっこをする「快尿」という言葉を、
旭川医科大学の松本成史先生が提唱されています。
快尿を取り戻すことが、アンチエイジングになるというのは面白いですね。
21秒。 計ったことありませんね~。
気をつけてみます!
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