東京大学などの研究チームが、致死率の高い感染症「エボラ出血熱」の
国産初のワクチンを開発し、今月から臨床研究を始める。
まず国内で安全性を確認した後、来年以降、流行している
アフリカ中部などで効果を調べる。
エボラ出血熱は2014年にアフリカ西部で
アウトブレイク(大量感染)が起きて以降、
米国やスペインなどで医療従事者が感染するケースも発生している。
日本ではこれまで患者は確認されていないが、
訪日外国人が増えていることなどから、国内での対策が急がれている。
今回のワクチンは、国内で患者が発生した場合に、
治療や看護に当たる医療従事者に接種することを想定。
医療体制を維持し、国内での感染拡大防止につなげることを主目的としている。
チームの河岡義裕・東大医科学研究所教授(ウイルス学)らは、
遺伝子を操作するなどして、増殖力も感染力もなくなった
ウイルスを使ってワクチンを開発した。
10匹のサルに接種した上で、致死量のエボラウイルスを感染させたところ、
症状は表れず全て生き残り、動物実験では効果と安全性が確かめられている。
臨床研究は、東大医科学研で、健康な成人男性計30人を対象に行われる。
4週間の間隔を空けて2回注射した後、副作用がないかや、
エボラウイルスに対する免疫ができているかなどを定期的に調べる。
ワクチンの安全性が確認されれば、製薬会社の協力を得て、
流行が続くコンゴ民主共和国などで有効性を確かめる考えだ。
エボラウイルスのワクチンは、海外では一部実用化されている。
だが、接種後に重い関節炎など重篤な副作用が報告されており、
より安全で作りやすいワクチンの開発が求められている。
河岡教授は「感染力をなくして体内で増えないようにしているので、
より安全性が高い。自国で有効なワクチンを持つことは
国民の安全確保のために重要だ」と話す。
長崎大の安田二朗教授(ウイルス学)の話「エボラは極めて致死率が高く、
ワクチンの開発を進めることが急務となっている。
日本でも臨床研究が始まるのはエボラ対策の大きな一歩だ」
◆エボラ出血熱=1976年にアフリカ中部で見つかったウイルス性感染症で、
致死率は平均50%(世界保健機関調べ)。
患者の血液などの体液に接触して感染する。
多くは感染後10日ほどで嘔吐(おうと)や下痢がひどくなり、
多臓器不全や全身からの出血を起こす。
2014~16年にアフリカ西部で流行した際には約1万1000人が死亡した。
現在はコンゴ民主共和国で流行が続き、3000人以上が感染し、
約2000人が死亡している。
~~~讀賣新聞オンラインより~~~