黒いきつね

2019.08.23

黒いキツネには哀しい歴史がありました

 北海道では、キツネといえば、明るいオレンジ色のキタキツネ(RED FOX)が有名ですが、

実は、彼らとは異なる黒いキツネ、十字狐(CROSS FOX)も生息しています。

 

 警戒心があまりに強く、人前にまず現れないので、その存在をしっている人は少ないようです。

 三毛狐と呼ばれることもあります。

 十字狐は、その昔、キツネの毛皮が高値で売買されていた頃、

養狐場に千島列島などから連れて来られたキツネの子孫だと考えられています。

 十字狐は、背中に十文字の美しい模様があるため、その毛皮は特に高く売れたそうです。

 より綺麗な十文字を出すために、赤いキタキツネと十字狐の交雑が行われました。

 そのため、十字狐は、真っ黒な個体、キタキツネのような明るい色の部分が多い個体など

さまざまな色の個体がいます。

 毛皮が売れなくなり、養狐場が衰退すると、養殖されていたキツネたちは山に放されました。

 そうして、野生にかえって交配を繰り返し、現在もたくましく生き延びている個体がいます。

 十字狐が生息する地域は限られていて、調べて行くと、やはり昔、養狐場のあった場所の近辺に生息しています。

 その歴史を知ると、十字狐は、なんだか哀愁をおびた存在に思えてきます。

 ただ、そういう説とは別に、アイヌの伝説にも黒い狐が出てきます。

 アイヌの人々に「シトゥンペカムイ」と呼ばれる黒い狐は、「人に危機の到来を告げる神」とされ、

崇められてきました。

 養狐のために連れて来られる以前から、黒い狐は北海道に存在したのではないかと僕は思っています。

 シトゥンペカムイの姿は神々しく、見つけるといつも感動します。

 10年後、20年後、いや、100年後の未来まで、その血が途絶えることがなく、

いつまでもその姿を見られることを祈っています。

 

~~~現代ビジネスより~~~

 

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